胃癌
胃がんとは
胃がんは胃にできる悪性腫瘍です。「毎年、10万人以上が胃がんの診断を受け、胃がんの罹患率は男性では第3位、女性では第5位です(2019年統計)。 また、死亡数は42319人で男性では第2位、女性では第4位となっております(2020年統計)。」
胃がんの原因とリスクファクター
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原因
- 胃の粘膜に慢性的な炎症や傷が生じ、細胞が再生される過程で突然変異が起こること
- その他、明確な原因は完全には解明されておりません。
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リスクファクター
- H. pylori(ヘリコバクター・ピロリ)感染 (ほぼ99%がこれが原因)
- 高塩分の食事や加工肉の摂取
- 長期的な胃の炎症や胃潰瘍
- 家族歴や遺伝
- 喫煙
胃がんの症状
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- 初期は症状がほとんど現れません。内視鏡をしないとわかりません。
- 進行すると次のような症状が出現します。
- 胃部の痛みや不快感
- 食欲不振
- 急激な体重減少
- 吐き気や嘔吐
- 腹部の膨張感
- 黒い便(下血のサイン) …黒い便は胃や十二指腸で出血した赤い血がおしりから出るときには酸化して黒くなります。
黒い便がでる食べ物:イカ墨、赤ワイン、鉄分を多く含む食材(鉄剤の薬も含む) etc - 食事後の過度な吐き気や胸焼け
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胃がんは、進行が進んで初めて症状が明らかになることが多いため、症状が現れたときには既に進行期になっていることが多いです。この段階になると、治療が困難となり命にかかわるリスクが高まります。そのため、胃がんを予防し、早期に発見するためには、定期的な胃カメラ検査が不可欠です。特に、胃カメラによる検査は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染や萎縮性胃炎の有無を判断する上で極めて重要です。
早期発見の重要性
胃がんは、しばしば「沈黙のキラー」とも称されることがあります。その理由は、初期段階では症状がほとんど表れず、多くの患者さんが症状が出現する頃には進行期に進行しているためです。しかし、早期に発見された胃がんは、治療の成功率が高く、予後も非常に良好です。
早期の治療成功率
胃がんが早期に発見された場合、手術やその他の治療法での完治の可能性が大きく高まります。実際、初期段階での治療を受けることで、5年生存率が大幅に上昇します。
予後の良好さ
胃がんが早期に発見された場合、その状態では転移や浸潤のリスクが非常に低くなります。そのため、治療を受けた後の生活の質も大きく維持されることが期待されます。事実、適切な治療を受けた多くの方は、日常の生活をほぼ通常通りに過ごすことができるようになります。
一方、胃がんが進行してしまった場合、外科的な手術が選択されることが増えます。また、進行が進んでいる状態では、がん細胞が他の部位に転移する可能性も高まります。さらに、手術により胃の部分を切除すると、食欲の低下が起こることがあります。これが原因で筋肉量が減少し、サルコペニアという状態が進行する可能性があります。サルコペニアは体力の低下をもたらし、日常生活に影響を及ぼすことが懸念されます。
胃カメラ検査の重要性
胃カメラ検査は、胃がんの早期発見に欠かせないツールです。この検査を通じて、胃の内部を直接観察し、異常や病変を確認することができます。特に、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染や萎縮性胃炎の有無の確認は、胃がんのリスクを判断する上で非常に重要です。
定期的な健診の推奨
胃がんのリスクがある人、特に中高年の方や家族歴がある方は、定期的に胃の健診を受けることを強く推奨します。年に1回の健診が、早期発見の鍵となり、命を救う可能性があります。
定期検査の間隔については萎縮性胃炎のページにてご確認ください。
早期胃がん
以下の写真は早期胃がんの一例です。通常の白色光の内視鏡では、病変の特定が難しい場合がありますが、LCIやBLIなどの最新の内視鏡システムを活用することで、病変部分の特定が格段に容易となります。早期胃がんをこの段階で正確に診断することは極めて重要です。特に、この状態であれば内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を用いて、外科的手術を行わず、胃の部分を切除することなく、また、がんの転移のリスクなしに治療を行うことができます。
ヘリコバクター・ピロリ菌に感染した結果、萎縮性胃炎を発症している方は、定期的な胃カメラ検査が強く推奨されます。早期の段階での発見と治療により、治癒の可能性が高まるだけでなく、命の危険を大きく回避することができるのです。