膵がん
膵臓とは
膵がんは、私たちの体の中にある「膵臓」という器官で発生するがんのことを指します。膵臓は、お腹の中央部分に位置しており、大きさとしては手のひらよりやや大きいくらいです。
膵臓には大きく分けて2つの重要な役割があります。
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消化のサポート: 食べ物の消化を助けるための液体(消化酵素)を作り出します。これにより、私たちが食べる食事を体が吸収しやすい形に変えてくれます。
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血糖値の調整: 「インスリン」というホルモンを分泌し、体の中の糖分のバランスを保ちます。これにより、血糖値が適切な範囲内に保たれます。この機能が弱くなると糖尿病という病気になります。
膵がんとは
膵がんは、膵臓の中で膵液(消化の役割をする液体)が流れる小さな管の表面の細胞から始まる癌のことを指します。この中でも、「管状腺癌」というタイプが最も一般的で、膵臓のがんの中で80~90%がこのタイプになります。
膵がんは、小さなリンパ管や血管にすぐに広がってしまうことがあります。これにより、がんが他の場所に移動してしまうことがあるのです。さらに、膵臓の近くの神経にもがんが広がりやすいのが特徴です。そのために早期に診断することが重要になります。
膵がんの診断・検査の手順
1. 症状の確認
- 最初に、医師があなたの症状や健康の経歴についての質問をします。
- 背中や腹部の痛み、体重の減少、黄疸(肌や目の白部が黄色くなること)などの症状がある場合、膵がんの可能性が考えられます。
2. 血液検査
- 膵がんのマーカー(主にCA19-9)や肝機能を確認するための血液検査が行われます。
3. イメージング検査
- 超音波検査 (US):腹部の画像をとって膵臓の異常を確認します。
- CTスキャン:体の断面画像を取得し、膵臓や周囲の組織の異常を詳しく調べます。
- MRI:磁場を利用して膵臓の詳細な画像を取得します。
- 内視鏡超音波検査 (EUS):内視鏡を使って食道・胃・十二指腸から膵臓の近くで超音波検査を行い、詳細な画像を取得します。
4. 組織検査(生検)
- 疑わしい部分から細胞を採取し、その細胞ががん細胞であるかを確認します。
5. 診断結果の確認
- 上記の検査結果を元に、医師が膵がんであるか、または進行の程度を確認し、適切な治療方法を提案します。
膵がんのリスクファクター
膵がんのリスクファクターは、膵がんの発症の可能性を高める要因や状況を指します。以下はその主要なリスクファクターを詳しく説明したものです。
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タバコの使用
- タバコを吸う人は吸わない人に比べて膵がんのリスクが2倍高くなると言われています。タバコに含まれる有害物質が膵臓の細胞にダメージを与え、がんを引き起こす可能性が高まります。
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家族歴・遺伝的な要因
- 家族が膵がんだった場合の膵がんの罹患リスク
家族の1人が膵がん : 自分自身が膵がんになるリスク2.3倍
家族の2人が膵がん : 自分自身が膵がんになるリスクは6倍
家族の3人以上が膵がん : 自分自身が膵がんになるリスクは32倍
- 家族が膵がんだった場合の膵がんの罹患リスク
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食生活
- 高脂肪・高カロリー、加工肉や赤身肉を多く摂取する食生活は、膵がんのリスクを高める可能性があります。野菜や果物を多く摂取することでリスクを低減できるとも言われています。
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アルコールの過度な摂取
- 長期間にわたり大量のアルコールを摂取することは、慢性膵炎のリスクを上げ、これが膵がんのリスクを増加させる可能性があります。
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年齢や性別
- 膵がんの多くは、60歳以上の高齢者に診断されます。また、男性の方がリスクが若干高いとされています。
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慢性膵炎
- 膵臓の炎症が長く続く慢性膵炎は、膵がんのリスクを高める要因となります。
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糖尿病
- 長期間の糖尿病は、膵がんのリスクを上げることが知られています。
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膵のう胞
- 健診結果等で偶然見つけた膵のう胞の存在は膵がんのリスクと言われており、定期的な血液検査と画像検査による経過観察が必要です。
これらのリスクファクターが存在するからといって、必ずしも膵がんになるわけではありません。しかし、これらの要因を理解し、健康的な生活習慣を心がけることで、リスクを低減する努力をすることが推奨されます