ヘリコバクターピロリ菌
ヘリコバクターピロリ菌とは?
ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)は、胃の粘膜に生息する細菌で、その正式名もヘリコバクターピロリです。"ヘリコ"は、らせんや旋回を意味し、ヘリコプターのヘリコと同様、この細菌のひげの部分も回転して移動します。"バクター"はバクテリア(細菌)を意味し、"ピロリ"は、胃の出口を指す"ピロルス"から名付けられました。この細菌は、世界の人口の約半分が感染しているとされていますが、感染した多くの人々において、特に症状を引き起こさず、胃内で生活しています。しかし、一部の人々においては、H. pyloriの感染が胃の炎症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどの胃の疾患を引き起こす可能性があります。WHO(世界保健機関)ではH.pyloriが胃がんの確実な発癌因子として認定しています。日本では胃がんの約99%がH.pylori感染によるものと言われています。
ヘリコバクターピロリ菌の感染が胃の不調を引き起こすメカニズム
ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)は、他の多くの細菌が生存できない強酸性の胃の環境でも生存する能力を持っています。この細菌は、胃の粘膜に付着し、胃の酸を中和するアンモニアを生成することで、その周囲のpHを上昇させ、生存することができます。
しかし、このアンモニアは、胃の粘膜を刺激し、炎症を引き起こす可能性があります。また、H. pyloriは、胃の粘膜にダメージを与え、胃の酸による進一歩なダメージを引き起こすことができます。これにより、胃の不調、胃痛、胃酸逆流、吐き気、嘔吐などの症状が現れることがあります。
ヘリコバクターピロリ菌感染のリスク
ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)の感染リスクは、年齢、居住地、生活環境など様々な要因によって異なります。特に、開発途上国、衛生状態が不良な地域、人口密度が高い地域では、感染リスクが高くなると考えられます。
年齢に関して、H. pyloriの感染は主に幼少期に起こるとされています。一般的に、胃の発達が未熟な5歳までの子供が感染しやすいと言われています。5歳を過ぎると、子供の胃酸分泌が大人並みになり、感染する可能性は大幅に減少します。
また、家族間での感染も報告されています。感染した家族メンバーがいる場合、他の家族メンバーも感染するリスクが高まります。
ヘリコバクターピロリ菌の診断と治療
診断
ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)の感染を診断するためのいくつかの方法があります。
1. 呼気テスト
呼気テストは、ヘリコバクターピロリ菌の診断のための非侵襲的な方法です。患者に特定の溶液を飲ませた後、患者の呼気を収集し、アンモニアの量を測定します。ヘリコバクターピロリ菌はアンモニアを生成するため、呼気中のアンモニアの量が増加すると、感染の兆候とされます。
2. 血液検査
血液検査は、ヘリコバクターピロリ菌に対する抗体の存在を確認するための方法です。この方法は、他の診断方法に比べて精度が低いため、他の診断方法と組み合わせて使用されることが多いです。
3. 便検査
便検査は、便中のヘリコバクターピロリ菌の遺伝子を検出する方法です。この方法は、比較的簡単で、非侵襲的なため、子供や高齢者にも適しています。
4. 胃内視鏡検査
胃内視鏡検査は、胃の粘膜から取得した生検組織を検査することで、ヘリコバクターピロリ菌の感染を確認する方法です。この方法は、他の方法に比べて精度が高いため、確定診断のために使用されることが多いです。
治療
ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)の除菌療法は、胃酸分泌抑制薬1種類と抗菌薬2種類、合計3種類の薬を、1日2回、7日間服用する治療法です。具体的には、胃酸の分泌を抑える薬(例:プロトンポンプ阻害剤)と、2種類の抗菌薬(例:クラリスロマイシン、アモキシシリン)を服用します。この治療が終了した後、約8週間経過した時点で、再び検査を行い、H. pyloriが完全に除去されたかどうかを確認する必要があります。
H. pyloriの除菌治療には、胃酸分泌抑制薬と抗菌薬の服用が必要で、治療終了後には再検査が必要であることを理解することが重要です。
一般的な副作用
1. 消化器系の副作用
除菌療法に使用される抗生物質と酸分泌抑制薬は、胃腸の不調を引き起こす可能性があります。これには、下痢、便秘、腹痛、腹部膨満感、吐き気、嘔吐などが含まれます。
→自分の判断で薬の飲む量や回数を減らしたりせずに、残りの薬を最後まで(7日間)飲み続けてください。
ただし、症状がひどくなった場合は、主治医または薬剤師に相談してください。
2. 口腔の副作用
一部の患者では、口の中が苦い、舌が黒くなる、口内炎などの口腔の副作用が報告されています。
→自分の判断で薬の飲む量や回数を減らしたりせずに、残りの薬を最後まで(7日間)飲み続けてください。
ただし、症状がひどくなった場合は、主治医または薬剤師に相談してください。
3. 皮膚の副作用
皮膚の発疹、かゆみ、蕁麻疹(じんましん)などの皮膚の副作用が、一部の患者で発生する可能性があります。
→主治医の医療機関に受診して内服継続可能か相談するようにしてください。
4. 中枢神経系の副作用
頭痛、めまい、不眠などの中枢神経系の副作用が、一部の患者で報告されています。
→自分の判断で薬の飲む量や回数を減らしたりせずに、残りの薬を最後まで(7日間)飲み続けてください。
ただし、症状がひどくなった場合は、主治医または薬剤師に相談してください。
まとめ
ヘリコバクターピロリ菌の除菌療法は、一部の患者で副作用を引き起こす可能性があります。しかし、これらの副作用は、通常、軽度で一時的なものです。副作用が現れた場合、上記の対処方法を試し、必要に応じて医師に相談することが重要です。
最後に
ヘリコバクターピロリ菌(H. pylori)は胃がんの発症リスクと言われています。萎縮の程度や年齢によっても異なりますが10年間での胃がんの発生率はピロリ菌のいる方でおよそ3%、いない方でほぼ0%といわれています。つまり日本人の胃がんの99%はピロリ菌がいる人から起こるのです。胃がんを予防するためには適切な検査(胃カメラ)とピロリ菌の治療をお勧めします。